造園業のよもやま話
その7 北沢さんのアルミ三脚    ・・・2005.7.12

 庭木の剪定には欠かせない、三脚。
 ひと昔前までは竹や丸太、あるいは鉄でできていた三脚も今は皆アルミ製で、ホームセンターでも普通に売られている。
 そのアルミ三脚を作っている、北沢さんのパンフレットを作らせていただくことになった。そこで、剪定の現場へ撮影に出かけた。
 この「北沢さんのアルミ三脚」のうわさは、4、5年前からよく、耳にしていた。
 …足がスライド(伸びる)するのだ。しかも、三本とも!(基本的には軸になる1本がスライドで、あとはオプションでどうとでも作ってくれる。)昔ながらの保持棒(支えになる棒)が自在に振れる「首振り」というものも作っていて「本職用のメーカーさん」というイメージがあった。
 庭職人の言うには、「現場は石組んであったり木がせってたり、平らな地面ばかじゃねえしな、三脚が立たらねえところはハシゴにロップ(ロープのこと)かけて上るんだけどよ、北沢んのは足がスライドするし丈夫で使えるんだよなあ」。
 要するに、ハシゴの代わりにロープをかけて引っ張っても丈夫で壊れない(注:この使い方は通常使用の範囲外)、足が3本ともスライドするので傾斜地でもステップが平らになり、てっぺんまで普通に乗れる(注:三脚の天板には絶対に乗ってはいけない)という意味らしい。
 へええ。国産で手作り(ホームセンターなどで流通しているものはほとんど中国製だ)なんて!…こんな近く(上田市)にそんな人たちがいたんだ、社長さんはどんな方かしらと、職人好きの私は前々から興味しんしんだったのだ。

 そんな折、偶然北沢さんにお会いできる機会がやってきた。
 今は「造園業」の「設計」と言うよりも「広告業」の「イラストレーター」に殆ど、傾いている私の商売。中途半端な自己紹介をする私に最初はやはり「…?」と言ったお顔の北沢さんだったが、お忙しい中いろいろなお話を聞かせてくださった。
 例に漏れず中国製品に押され、国産アルミ三脚メーカーも日本ではもう数社が残るだけということ、アルミの原料価格が値上がりして厳しい状況であること、それでも使っていただくお客さんのことを考えると決して手は抜けないこと。
 工場では数人の職人さんが手作業でアルミの溶接をしている。
 北沢さんも作られるんですか、と聞くと
 「もちろん、作ります。スライド部分の溶接は自分しかやりません」。
 「もったいないですね。国産でしかもひとつひとつこれだけ手間をかけている製品を、代理店だけで売るのは…」と私が言うと、
 「代理店も大切なお客さんだから。」ううむ、さすが職人。
 北沢さんは作った三脚に自社のステッカーすら貼らない。それでも修理や改造を引き受けてくれるので、お客さんのほうからなんとかして連絡先を探しあてて注文が来ることもあるそうだ。
 販売を代理店に限っているわけでもなく、個人でも買えるのだが、
 「ただむやみに売るための営業はしたくないんです。うちの製品を本当にわかってくれる人に使って欲しいからね。」
 あまりにももったいないので、ぜんぜん更新してない私のホームページに、ちょこっと宣伝させてくださいと言うと
 「あ、ちょうどチラシの内容が古くなっちゃって新しいのを作ってくれってお客さんにずっと言われているんで、作ってもらえませんか」となんと、初めて会う私にそうおっしゃる北沢さん。
 「今日は営業に来たわけじゃないんです、こんな素人に毛の生えたような私でなくても、もっと良い印刷屋さんや広告屋さんを紹介します。」と言うと、
 「これまでもそういう話(広告作らないかとか、ホームページ作らないかとか…)はあったんですよ。でも、商売としてでなく、私たちの製品を理解してくれる人に作ってもらいたい」…そこまで言っていただいては、「ありがとうございます。是非、やらせていただきます。」と言わないわけにはいかないではないか、印刷業界駆け出しの私でも。
 思いがけない展開に、逆にプレッシャーを感じながら帰途に着いた私だったが、また気をとりなおし「果樹用アルミ製品パンフレット」を製作中。次に「造園用」を作る予定。

 プロの庭職人は「北沢のじゃねえと仕事になんねえ」と言っている。庭があって庭木があれば必ず必要になってくるのが三脚。枝おろし、消毒、ひとつは常備している家がほとんどだろう。
 そのひとつを選ぶとき、ホームセンターで安易に買わずに、北沢さんの三脚を選んでくれる人がもっと増えてくれたらいいなと思う。
  北沢さんの三脚はホームセンターには無い。造園資材店か、農協関係の資材店で入手できる(長野県中信地方)。直接問い合わせれば全国発送もしてくれるそうだ。…ただ手作りなので、いつも在庫があるとは限らないが…


キタザワの剪定用三脚。パイプの太さ、ステップの造り、細かい部分にも工夫がある

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