| 泥だんご 2006.9.18 ある夏の日曜日の我が家の会話。 「ハイお母ちゃん、おみやげ〜」「おお!見事な泥だんご」「いや〜何もすることなくってヒマだったからさ〜、公園で○○と2人で泥だんご作ったー」 へぇえ。小学校5年(♀)にもなって、泥団子を作ってくるとは思わなんだ。 彼女は、ランドセルの中で萎れた桜の花とかスミレの花とか、いいにおいのする葉っぱとか、石ころとか紅葉した落ち葉とか、何かと「おみやげだよ」と学校の帰り道に持ち帰ってくる。ましてや貴重な休日に制作した、手間をかけた泥団子は100パーセント、必ず持ち帰ってくるのだ。 さて持ち帰られてしまったからには、展示せねばならない。 タタキ締めも乾燥も中途半端な泥団子は、ウッカリするとちょっとした拍子に泥に、というか土に戻る。そこでいつもは玄関を出たところの、丸太の上に展示?していた。 それは暫くその場所で鎮座しているが、雨が降るたびに小さくなって、いつの間にか土に帰り、そして風に吹かれて消えている。 今回プレゼントされた作品はもしかしたら、というかたぶん彼女の人生で最後の泥団子かもしれない。…そこで、少しでも長く眺められるように玄関の中の棚の上に展示した。 雨に降られることも無いのでほとんど形も変わらず(転がったり何かにぶつかったりして傷にはなったが)、夏に制作された泥団子はついに実りの秋を迎えた。 土をこねる、ということを誰も教えなくても、そこに土と水があれば子供は泥遊びを始める。そしてお饅頭を作り、さらに丸めて団子にして、何度もこすってピカピカにして、乾燥させて宝物にする。そんな記憶は私にもある。 今は保育園で泥団子遊びを教えるらしい。子供に聞いてみたら最初の記憶はやはり保育園だそうだ。 この原理を、人間が経験と研究を重ね生活に生かしたのが、昔ながらの土壁やタタキ(三和土)、漆喰壁などの左官仕事である。 今の左官業はモルタル(セメント+砂+水)を塗りつける仕事が殆どだが、セメントなんて無かった頃は土や砂、わらなどその辺にあるものが壁や床の材料だった。 土間コン(コンクリート=セメント+砂+砂利+水)は誰しも耳にしたことがある言葉だと思うが、もともとは土で叩き締められた硬い地面を「土間」と呼んだ。 こんな「土仕事」を見たことも聞いたこともない、という人もたくさんいると思う。左官業者も、造園業者も土を扱える人は少ない。…と言うよりも、老若問わず扱おうなんて思う人はまずいない。 今となっては貴重なのは土や藁(わら)。一方セメントは、どこでも手軽に手に入るからだ。 手間も時間もかかり、微妙な加減がいる土の仕事では採算が取れない。ただでさえ厳しい職人業界である、よほど酔狂な施主に恵まれるか、何かのイベントでない限り、日々の仕事には手軽に手に入る安価なセメントを使うに決まっている…たとえそれが、永遠に土に帰らないものだとわかっていても。 また土仕事は泥団子を想像すると一見手軽で簡単なようだが、それで「お金をいただこうと」思うと、これがとても大変な仕事なのである。 湿度や温度、湿気や天候に左右されるとても微妙な仕事で、そこには職人の長年の経験と勘が必要となる。インスタントではできない、とてもスローな仕事なのである。 だからそんな技術を伝える場所も少ないし、そんな仕事を選ぶ施主も少ない。 そうして受け継がれられることのないまま、またひとつ、何か大切なものが時代とともに、無くなっていく。 …と暗〜いノリで終わるのもなんなので、せっかくだからそんな儲からない仕事をする酔狂な人々の作品を見られるサイトをリンクしちゃおう(とりあえず今回は造園屋さん限定。左官屋さんは知識がないのでまた次回。 サイトを持つ数少ない造園屋さんの中の、ネットを駆使する数少ない親方さんの中のさらに「まず、いない」中の希少な方々…フゥ、ですが、まだいらっしゃるとは思います。今私が知り得る範囲)。 皆さん、どなたも強烈な個性があるからそれぞれ仕事は様々だけれど、ポリシーは共通している。 心のある仕事とは何か、いつも考えている。 自分の仕事がいかに罪作りなものかをわきまえている。 狭い庭の中の仕事では終わらない使命感を持っている。 昔ながらの技術を学び、現代に生かそうと苦心している。 大量生産化学合成製品のメリットを認識した上で、それらを安易に使わない。 採算を考えるのも大事だが誠意がなければ仕事ではないと思っている。 ・・・皆さんがあんまり儲かっていないように見える(すみません)のも、好きなところなんである。 でも、そんな方々が儲かる時代が来ればいいと、私は切実に思っている。 ・藤倉造園設計事務所/東京 ざっくりした三和土(タタキ)の園路が見られます→クラシックな雰囲気で自然風の庭 また土を叩き締め天井にした自作の炭窯も必見(→不老山 陶陽庭) ・庭 遊庵/京都 できる限りセメントを避け、庭のすべてを再生できる素材にしようという姿勢はすごい、の一言。三和土はあたりまえのように施工例に出てくる。古土を再生した土壁、土の色が美しい「版築」など土仕事がたくさん見られます→作庭記へ(スライドショー) ・高田造園事務所/千葉 「庭ができるまで」では土塀の詳しい製作過程を紹介、またすばらしいデザインセンスが感じられる土の仕事は「土壁、壁泉、創作の庭」へ ・紅の葉の苑(福岡造園)/秋田 「柿の木の下で Part2」石のテラスの目地に粘土目地を取り入れています。「現場で出た土や砂、石を無駄にせず使う」この目地粘土も現場の土 「庭が完成するまで」試行錯誤の過程まで写真解説付きでオール公開、既存材と現場の材料を駆使したリフォームの庭。 ・誠意と創意の庭(新樹造園)/富山 茶室にじり口の美しい漆喰舗装(誠意と創造の庭・にじり口と一足脱ぎ)、またセメントを使っても個性が光る「漆喰風舗装(最近の仕事・漆喰風舗装)」まるでタタキのようなあたたかい風合いがあります。 ・北郷創庭舎/福島 「アプローチ改修」芝の単調なアプローチを、既存石とタタキ(三和土)を組み合わせた管理のしやすいものにリフォームされています。モダンでハイセンスな北郷さんのデザインにも、三和土はしっくりと馴染んでいます。 ・MONKおやじの怪傑庭職人 昔ながらの庭師さんという雰囲気にホッとさせられるサイト、特に「庭仕事雑感」はエッセイとしても最高。この中に、「勝手につくっちゃうもんね作戦」と題して土塀つくりの話がある。超オモシロ。この作戦は10年計画で今でも実行中らしい。行けイケMONKさん! ※ところで薬漬けの腐葉土までも輸入(大手ホームセンターなんかは大体そう)している日本という国、まさか土や藁まで輸入してないよね…。そこまでして土壁は作らないで欲しいなぁ(流行るとホームセンターなんかで売るDIYモノ、土壁風塗り材…なんてのがあったりして。…えっ、もう出てる!?) |
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