〜テーマで分けられた庭〜

S邸〜いくつもの顔を持つ庭 庭の写真集

山野草を楽しむ庭
◆設計・施工 (株)奨樹園/設計協力 工房ジネン

施工前の様子。
角にある石は面白い模様の良い石ですが、
なんとなぽつんとく寂しそうに見えます。
プロが作ったコーナーと言うことですが、背が高くなるラムズイヤーが
中心に儲けられた花壇の縁取りに使われており
ちょっと首を傾げてしまいます。
見事なドウダンも、なんとなく窮屈そうに見えます。


ラムズイヤーは丈夫でよく増え、葉色も美しい植物です。
移植して残す提案をしましたが、
S婦人はぐんぐん増えるこのツワモノにちょっとお困りのご様子で
総て撤去することに。

最初は土の上にマルチングのように敷いてあったらしい
レッドロックストーン(輸入物の火山岩砕石)が
隅に追いやられています。


山野草の庭のイメージスケッチ

玄関のすぐ横にあるこのスペースを、
S婦人自作の山野草の寄せ植えの管理兼展示コーナーにすることに。
鉢を乗せる棚は、大工仕事もでき工場も持つ外構の職人さんにお願いします。
玄関にいらした花好きのお客様と、S婦人のお話もはずむことでしょう。


山野草は本当は東側か北側が理想ですが、様々な事情を考慮して
一番目の届きやすいこの場所にしました。

株立ちのエゴだけ、新しく植えます。
大きく育てばちょうど良い西日避けになってくれるでしょう。

山野草を地植えする花壇スペースも、というご依頼をいただいたので、
石を使った小さな花壇を棚の横に組んでみました。

東の花壇から、ドウダンの玉ものを移植。
もう少し石に寄せたかったのですが
年代もので根鉢が大きく、この位置に決定。
できるだけ自然樹形に戻してゆく予定です。



S婦人はアジサイもお好きです。
あちこちにあったアジサイをまとめて、
アジサイと山野草の庭に作りかえます


壁の前の大きなドウダンはいじるのを止めました。
「その場所で居心地がよさそうにしている木は、
できるだけそのままにしましょう」と親方。
施工後の早春の様子です。
ドウダンもエゴもまだ冬芽の状態です。


雑木とも呼ばれる山の落葉樹は、
葉を落としたこの冬の姿も観賞価値があり、
年月を経た木ほど素晴らしい枝振りを冬中披露してくれます。

春の芽だしの葉色もそれぞれに美しく、花も実も楽しめて
季節感を感じさせてくれる素晴らしい木です。

玉仕立ての大きなドウダンが自然樹形になるには
どのくらい年月がかかるでしょうか。




平成18年の8月の様子。
S婦人が作られた山野草の寄せ植えたち。
瓦に乗せたもの、石につけたもの、植えられた草も様々です。

スペースいっぱいに、できるだけ大きい棚を作っていただきましたが
どうやら足りなくなってしまったようです。
丈夫なものは、順次地植えにして行かれるとのこと。

エゴもすっかり根付いて、葉を茂らせています。
客間の窓から、風にそよぐ枝葉や、
下を向いて咲く可憐な白い花が楽しめるようになりました。





飛び石を据える職人さんに手を貸していただきながら
山の石を使って、私が石を組んでみた山野草の花壇です。
山野草のミニ・ロックガーデン、と言ったところでしょうか。

両腕を広げたほどの広さで、
後の方は地面から40センチほどの高さに石を組んであります。
この花壇の中には桐生砂、普通の砂、腐葉土、硬質赤玉が
入れてあります。

3年経って、草が石に被さり、すっかりまわりに馴染んでしまいました。

花壇の中も外も、増えたフウロソウに席捲されてしまいました。

残るもの、絶えるもの、山野草の運命も様々です。

草取りの時、シルバーさんに引き抜かれたものもあります。
地植えの山野草の管理は、雑草を管理することでもあります。

簡単なようで難しく、難しいようで簡単なこと…なのですが
いずれにせよ状況を見ながらの移植、間引きはどうしても必要のようです。

エゴの木がもっと大きくなれば、
飛び石の間にコケも根付くようになるかもしれません。



朽ちてゆく石に添うアマドコロ。
下にちらりと見えるのはスミレとゲンノショウコ

そんなに早く朽ちては困る(笑)花壇と飛び石には
木曽のミカゲ石を使っています。
大変硬質で、小さくても重い石です。

ちなみに、転がしてある朽ちてゆく石は高価なイギリス産。
吸水率が高いのでしょう。
冬が過ぎ、春が来るたびに
皮が剥がれるように年々朽ちてゆきます。
ハウスメーカ−の設計指定で購入したものだそうですが
何処に使うのでしょうか…
自然な、わびたイメージで花壇の縁取りに使う、
というならなかなか味があって良いかもしれません。


植えた場所に無いので絶えてしまったかと思ったら、
ちゃっかり花壇の石の根のところに種で増えていた
イワカラクサ(ヨーロッパ産)。


今年の厳しい寒さにも耐えて、
よく生き残ってくれました。

鉢植えだと絶えてしまうことがある山野草も
地植えにすると生き延びる確率が高いように思います。
実生であることも環境に順応する条件かもしれません。


西別コケモモ。
土が気に入らないのか
あまり大きくはなっていませんでしたが
ちゃんと生きていました。
ちなみにこれは草ではなくツツジ科の常緑小低木です。

山野草は、花が咲いていないときは
大変主張が弱く、雑草がはびこってくると
見分けがつかなくなります。

山野草と雑草に境界はありません。
ただ山野草として愛でられるものはどうしても勢力が弱い。
(写真のフウロソウのように、逆に増えすぎて大変なことになる場合もあります。)
見つめるのは花の時だけ…でなく葉の形や芽だしの様子を観察し、
ふだんから朝な夕なに足元の草たちをじっくり見て
雑草も引き抜く前にそれらの葉の形の違い記憶しておくと、
その後の管理に苦しむことも少なくなります。
そしてこぼれ種で出た貴重品をうっかり抜いてしまうことも、
少なくなります。


山野草の棚の中にかわいらしいアジサイが。
「春、何もない枯れ枯れしたところに芽を出して、
可憐な花を咲かせてくれるから山野草は大好きなんです」とS婦人。
本当に、そうですね。




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