〜テーマで分けられた庭〜

S邸〜いくつもの顔を持つ庭 庭の写真集

芝庭から里山の景色へ

◆設計・施工 (株)奨樹園/設計協力 工房ジネン


一番条件の良い道路沿いの南庭。家からはやや離れ、
傍で眺められる場所ではないが、道を行く人、
この家を訪れる人は必ず目にする場所。


左の写真は、初めてS婦人を訪ねたときのものです。

S邸の広い庭の敷地の殆どには、芝が張られていました。

以前からあった大きな柿の木、コブシの木の傍らに、
見事な株になったツツジが移植してありました。
元は芝庭ではなかったようですが、道路に面したこのスペースには
すべて芝が張ってありました。
広い芝の中に木々がぽつんぽつんとあるように見えて、
また玄関を出た目の前にある、すばらしい大株のリュウキュウツツジは
その株の見事さゆえになんとはなしに圧迫感がありました。

最初に拝見した時の印象は、どれも年代を重ねた立派な木々なのに、
芝の中のでなんだかみな、肩身が狭そうに見えました。



玄関のまん前にあるリュウキュウツツジ。
きっと目隠し効果を狙ったのでしょうけれど、
この木も後のヤマザクラも、もうちょっと良い見え方にしてあげたい

最終的なプランは芝の中の飛び石を止め、
芝を剥がす部分を左右逆にし「ツツジの庭」から
「里山のイメージの庭」へ変更し、契約となりました。




施工前の様子


芝を剥がし玄関前のリュウキュウを移植したところ。
既存のツツジも一度堀上げ、
職人さんが向きと位置を見て変えています。
芝の境目には、芝止め板を入れてあります。

平成18年8月の様子。
施工時に植えた山野草もだいぶ淘汰され、
今はオカトラノオと野菊が茂ります。

最初はS家に伐採を検討されていた大きな柿の木と
その隣のコブシの木は元気に夏の葉を茂らせ、
真夏の厳しい日差しを遮って
下草たちに快適な木陰を提供しています。


ご多忙の上ご家族の入院が繰り返されお疲れのS婦人に
「この場所は草取りをしなくてもいいのではないですか。
雑草もそれなりに絵になっていると思いますよ」と私。

芝の中の雑草は気になりますが、
こんな風景は少し前までは、
どこの民家の庭先にも見ることのできた景色でした。
剪定が延び延びになっているのも
雑草が茂っているのも「ご愛嬌」として、
雑草の可憐な花たちを楽しんだ方が得、
と肩の力を抜くことも時には許されるのではないでしょうか。




山野草仲間から分けていただいたという丈夫な草たちは、
この場所でその勢力を伸ばしています。

シロツメクサ(クローバー)の花が、
まるで意図して植えられたかのように見えます。


最初は小さい株だった野菊が茂っています。

この場所で増えすぎた野草はポットに株分けし、
山野草の会のチャリティーに出品しているそうです。



この場所は、作り直す前は一面の芝でした。
今ではあらゆる草、あらゆる雑草がお互いに共生し、
かつ勢力のバランスを取ろうと、年ごとに様子を変えてゆきます。
徒長気味のアサギリソウに寄り添うタデ(アカマンマ)の
なんと風情のあることでしょう。




ただ転がしてある石が朽ちて土に帰る様子ですら、
自然の営みを感じることができます。
それも、この場所にあるからこそ。



S婦人の手植えのスイセンたち、もう真夏だと言うのに
葉は青々としていました。



施工前の様子。
道路沿いに、栗の木の株がありました。
伐採したものの、木はひこばえを出し
再生しようと必死になっていました。
根元からは何やら他の木も一緒に顔を出して
葉を茂らせています。

最初にこの庭を造園した時は切り株として残し、
寄せ植えの鉢を置く予定だったようですが
今回のリフォームでは可哀想ですが抜根することにしました。



大ツツジを移植して栗の切り株を抜いたら、
玄関を出ると山桜がまっすぐに目に飛び込んでくるようになりました。

毎年美しい花を咲かせるこの山桜で、
S家はお花見をされるそうです。
羨ましい限り。

芝に木陰を作っている山桜の手前の二本の木は、紅白のハナミズキ。
この芝の中の三本の木は、根元周りの芝を剥がし剪定をしたのみ。




左の写真は施工直後の冬の様子。

直射日光に焼かれていたシャクナゲを柿の木の足元に移植し、
黄葉が美しいヤマモミジと、ナツハゼを補植しました。
甘でも渋でも、今となっては貴重な秋の柿の実が楽しみです。

この翌年の春から、S婦人と一緒に
山野草をすこしづつ植え足して行きました。

S婦人が植えた白花のウツボグサ。



荒地に増えるヤナギラン。

木も草もすっかり茂った現在は、
絶えてしまったのかも知れません…。




頁の上へ      次へ