第4章 「花いちもんめ」その1

 

 戦前の子どもは、幼稚園や小学校ではともかく、家に帰ってからの外遊びでは、男の子女の

子が入り混じって遊ぶことはあまりなかったように記憶している。

 三つ四つという年齢でみそっかすに扱われていた私は、「かごめかごめ」や「花いちもんめ」な

どの外遊びに、女の子に混じって遊んだ。だがもう小学校の低学年になると、ガキ仲間の男の

子から「男と女の豆入り、豆入りったら豆入り」と囃し立てられるのだ。だから、「花いちもんめ」

で楽しく遊んだ記憶は、遠い遠い昔のこと、今は歌詞さえ忘れて、松本あたりでどんな言い回し

がされていたのか、どうしてもはっきりとは浮かばない。

 調べてみると、「花いちもんめ」は多少節回しやことばが異なっていても、ほぼ日本全国に流

布した童遊びだった。「とおりゃんせ」や「かごめかごめ」より、むしろポピュラーな遊びだったのだ

ろう。ふたつの組に分かれて競う、一種のゲームだったからか。

 人数は何人でも。多いほど面白みが増す。向き合って二列に並び、はじめ代表がジャンケン、

勝った組から歌に合わせて前進、負けた組は同じテンポで後退する。歌の各フレーズの終わり

に両組一緒に片足を挙げて拍子を取る。うろ覚えの歌詞を、新潟県高田に伝承するわらべ唄に

アレンジして次にしるす。多分、長野市あたりがこれと同じではなかったか。各組をそれぞれA・

Bとしよう。各フレーズごとに前進は交互。
       
 A 勝って嬉しい花いちもんめ

 B 負けてくやしい花いちもんめ

 A 隣のおばさんちょっとおいで

 B 鬼がこわくていかれない

 A お釜かぶってちょっとおいで

 B お釜底抜けいかれない

 A 座ぶとんかぶってちょっとおいで

 B 座ぶとんボロボロいかれない

 A あの子が欲しい

 B あの子じゃわからん

 A この子が欲しい

 B この子じゃわからん

 A 相談しましょ

 B そうしましょ

 ここで、各組の子どもは頭を寄せあいヒソヒソ。決まったところで、

 A ○○ちゃんとりたい花いちもんめ

 B ××ちゃんとりたい花いちもんめ

 指名されたふたりが中央に出てジャンケン、負けた子は勝ち組へ加えられる。こうして遊戯を

繰り返し、人数の多い組が勝ちとなる。少人数でやると、負けた組はゼロになるだろう。江戸期

の「子とり(親の後ろに子どもが一列に取りつき、鬼になったひとりが最後尾の子にタッチしよう

とするのを親役の子が妨害、うしろの子は逃げる)」と関連があるのかもしれない。どっちも子も

らい遊びだから、「子とり」のゲームなのだ。もし、「花いちもんめ」の源流が京都の子買い遊び

から発するという、一部の研究者の説が真実なら、この想像は当たりだろう。(その2へつづく
 


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