目で見る「春水」は、もっと美しいうすい藍色。
とてもきれいなブルーだ。
武井さんは春の水の流れを表現したのだろう。
私には川面に映る月のようにも見えた。
国宝・尾形光琳の「紅白梅図」にも、
紅梅と白梅の古木の間を流れゆく早春の川の流水が描かれている。
流れを筆で書いた後に、下に貼られた銀箔を硫黄で黒く変色させ
川面を浮き出させた、といわれていた画法が、
実は銀泥を使った下地の上に、流水の形を切り抜いた型紙を置き、
その上から藍を摺りこんだものである事が近頃の研究でわかったそうだ。
武井さんがこの「春水」をつくったとき、
光琳が「藍」を使って紅白梅図の流水を描いたことは誰も知らなかった。
三百年ちかい時を超えて、
武井さんは同じ「藍」という色で春の流水をこの着物に織り込んだ。


